【論文多数】脳の疲労をサウナが取る科学的根拠

 

脳の疲労とは、視覚や聴覚を経由して大量に入ってきた情報を、脳が処理しきれず、集中力が続かなかったり、仕事中にミスが生まれやすくなった状態。また長時間にわたる集中的な思考や作業を続けると、脳はエネルギーを消費し、疲労を感じる。
疲労の抱える問題は、体の疲労のように休んでも疲れがとれにくいことだ。体が疲労すれば横たわったりしていれば回復するが、脳の疲労は横たわったりリラックスしようとしてもなかなか取れない。仕事に追われていたり、心配事や悩みがあったり、スマホが常に近くにある状態だとなおさらだ。頭を休めるために何もしないでぼーっとしていても、脳はDMN(デフォルト・モード・ネットワークDefault Mode Networkの略語)という状態でずっと神経活動を続けて、雑念などが浮かんでしまう。DMNとは、脳が意識的な活動をしていないとき、つまり、ぼんやりしているときに活性化する神経回路のこと。ぼーっとしているのに、脳の総エネルギーの60~80%も雑念に使ってしまうのだ。内側(ないそく)前頭前野、後帯状皮質(こうたいじょうひしつ)、楔前部(けつぜんぶ)、下頭頂小葉(かとうちょうしょうよう)部位で構成されている。DMNは創造性を高めるというメリットがあるが、脳疲労というデメリットもある。ぼーっとしていると、急に良いアイデアが浮かんだりするが、同時に、脳が休めないということでもある。脳を休ませようと、目をつむって頭を真っ白にしようとしても、脳は休まらないのだ。
・DMNが続くと、総合失調症、うつ病、不安障害、ADHDアルツハイマー病などにつながる
論文名:精神障害とDMN
Default-mode brain dysfunction in mental disorders: a systematic review
Samantha J Broyd , Charmaine Demanuele, Stefan Debener, Suzannah K Helps, Christopher J James, Edmund J S Sonuga-Barke

これを何とかしようとしたのがマインドフルネスという瞑想の一種だ。グーグル、アップル、インテルゼネラル・ミルズゴールドマン・サックス、メドトロニック、エトナ、それに米国国防省などが導入して、一時は大流行した。
・瞑想を行うと、DMNの活動性が低下し脳のエネルギー消費を低下させる
論文名:瞑想体験がデフォルトモードネットワークのアクティビティコネクション相違に関連する
Meditation experience is associated with differences in default mode network activity and connectivity
Judson A Brewer 1, Patrick D Worhunsky, Jeremy R Gray, Yi-Yuan Tang, Jochen Weber, Hedy Kober

だがその後下火になったのは、マインドフルネスでDMNを抑えるのはとても難しいからだ。深い瞑想状態になるには、相当長い期間修練を積まなくてはならない。初心者にはハードルが高すぎる。
・マインドフルネスはトレーニングが必須で習熟度によって効果が異なる
論文名:瞑想未経験者における8週間のマインドフルネス瞑想トレーニング後の脳構造と低周波の振幅の変化
Alterations in Brain Structure and Amplitude of Low-frequency after 8 weeks of Mindfulness Meditation Training in Meditation-Naïve Subjects
Chuan-Chih Yang, Alfonso Barrós-Loscertales, Meng Li, Daniel Pinazo, Viola Borchardt, César Ávila & Martin Walter 

つまりDMNによる脳疲労の危険に気づいた有名企業がこぞってマインドフルネスを導入したが、多くの人には役に立たなかったということだ。

そこで登場するのがサウナだ。サウナに入った人なら、サウナの最中に複雑な考え事をすることが困難になることは誰もが体験する。サウナは普通なら死んでもおかしくない超高温の環境なので、身体が何とかそれに対応しようとするのに一生懸命で、脳が複雑な思考ができなくなっている。DMNによる脳の神経活動を抑えてしまうのだ。サウナは強引に脳の総エネルギーの60~80%を使うDMNを抑えることよって脳疲労がとれる環境を提供してくれる。マインドフルネスでDMNを抑えるには長い訓練が必要となるが、サウナにはそんなものは必要ないのだ。

・サウナがDMNのスイッチを切る。
論文名:人間の脳血流、非侵襲的頭蓋内圧、および熱耐性に対する加熱モードの影響
Influence of the mode of heating on cerebral blood flow, non-invasive intracranial pressure and thermal tolerance in humans
Travis D Gibbons, Philip N Ainslie, Kate N Thomas, Luke C Wilson, Ashley P Akerman, Joseph Donnelly, Holly A Campbell, Jim D Cotter 

・サウナにマインドフルネス効果がある
論文名:サウナとマインドフルネスはストレスを低減するのか?
岡澤隆佑
The Japanese Journal of Sauna, vol. 2, 2022

またサウナ前のストレスが大きければ大きいほど、サウナ後のストレスが減るという報告もある。イライラしているほど、疲れているほど、サウナの効果は大きい。
論文名:若年成人男性における反復的な高温熱ストレスと冷水による内分泌への影響
Endocrine Effects of Repeated Hot Thermal Stress and Cold Water Immersion in Young Adult Men
Robert Podstawski , Krzysztof Borysławski , Andrzej Pomianowski , Wioletta Krystkiewicz , Piotr Żurek