サウナの幸福度への影響 セロトニン


ととのいの快感だけでなく、サウナに入ると幸福を感じる人が多い。サウナに入る習慣を身につけた人がよく言うセリフ
・細かいことを気にしなくなった
・幸せを感じやすくなった
・ストレスが減った


サウナによって、われわれの脳内では何が起こって、幸福度を上げているのか紐解いていく。まず幸福と関わりのある脳内物質とサウナについての関係を見る。


セロトニン
幸せホルモンとして広く知られている。幸福感ややる気につながる脳内物質のほとんどはセロトニン。よって、幸福=セロトニンと断言する識者もいるほど。精神を安定させてくれるので、逆にこれが減ると、鬱になったり不安が増したり攻撃性が高まったりするので、つねに分泌を促したい。
昔は脳だけにある脳内物質だと言われてきたが、近年になって体内のセロトニンは脳ではなく、その9割が腸の粘膜に存在していることがはっきりしてきた。脳内に存在するセロトニンは全体の2%にすぎない。腸のセロトニンは、腸内の菌と酵素の助けを借りて、トリプトファンというアミノ酸が何度も化学反応を行って作られる。腸には迷走神経という太くて大きな神経があり、腸から脳へと感情信号を送っている(ただし腸のセロトニンは脳には届かない)。脳がストレスを感じれば、腸の調子は悪くなることもあるし、逆に、腸の調子が悪いと精神に悪影響を与えることもあり、お互いが影響しあっている。
腸には脳に次いで1億以上の神経細胞があり、脳とは独立して自らの判断で機能している。腸は脳からの信号を待つことなく消化吸収排泄の機能を果たしている。腸は人間の意志によってもコントロールすることはできない。腸のコントロールは、すべて自律神経によって行われている。
幸福感を決めるセロトニンの分泌を促すには、腸内環境を整えることが重要で、それには食事と、自律神経を鍛えることがとても重要になる。
食事はセロトニン分泌に大きく影響している。セロトニン必須アミノ酸トリプトファンという物質から合成されるが、トリプトファンは人間の体内では生成されないから、食事から摂取する必要がある。トリプトファンが含まれるのは、バナナ、カツオやマグロなど赤身魚、チーズや牛乳など乳製品、豆腐や納豆などの大豆製品、ナッツ類、たまご、鶏肉、そばなどがある。ビタミンB6、マグネシウムナイアシンセロトニン生成に関わってくる。
自律神経を鍛えるには、運動、睡眠、日光浴、ストレッチ、休息など色々あるが、サウナは短時間で自律神経を鍛えることができる。


サウナは以下のようにセロトニンを増やす


1.サウナがオキシトシンを分泌させる。オキシトシンが十分に分泌されているとセロトニンの分泌も増える。
2.自律神経が鍛えられると腸内環境が整い、セロトニン分泌を促す。
自律神経とは
ところでサウナを語るときによく出てくる自律神経とは何だろうか。自律神経は全身にくまなく広がっており、血管、胃、腸管、肝臓、腎臓、膀胱、性器、肺、瞳孔、心臓、汗腺、唾液腺、消化腺などを支配している。これらを支配することで、血圧、心拍数と脈拍数、体温、消化、代謝、水分と 電解質(ナトリウムやカルシウムなど)のバランス、体液(唾液、汗、涙)の分泌、排尿、排便、性的反応をつかさどっている。自律神経は自分の意思では動かす事が出来ない。自律神経の対となっているのが運動神経で、こちらは自分の意思で動かすことができる。脳から指令を出し、自分の体を動かすときに使われるのが運動神経。自律神経も運動神経も末梢神経(まっしょうしんけい)に含まれ、その中心となるのが中枢神経(ちゅうすうしんけい)、つまり脳と脊髄となる。


自律神経は、交感神経系と副交感神経系に分けられ、1つの臓器を両方で制御することもあれば、交感神経系か副交感神経系のどちからのみが制御する臓器もある。


交感神経は、緊急事態やストレスの多い非日常的な状況下で、戦うか逃げるかのどちらかに体の状態を持っていく。具体的には、心拍数を増やし呼吸がしやすくなるように気道を広げて、エネルギーを燃えやすくして、筋肉に大きな力がはいるようにする。
闘争と逃亡には重要ではない食べ物の消化や排尿などは鈍らせる。サウナに入る前にご飯を食べるなという理由がこれだ。サウナ中には交感神経が優位な状態なので、消化機能は鈍っているのでサウナ前に食べた物が消化不良になるからだ。お風呂だとおしっこをしたくなることがたまにあるが、サウナではめったにそうならないのは交感神経優位の状態で排尿機能を鈍らせているからだ。
副交感神経は、正常運転時のノーマルモードだ。狩りをしないライオンが休んでいるときのように、エネルギーを温存し、体を回復させる。心拍数はゆっくりで、血圧も下げる。交感神経が活発なときには鈍っている消化や排せつは逆に促進される。消化して吸収した栄養分から、組織の形成や修復を行う。