サウナ用語 アウフグース

 

アウフグースとは、タオルを使い、ロウリュで生じた蒸気をサウナ室中に広げ、客に熱波を送るサービスのこと。アウフグースを行う人を、熱波を送る人という意味で熱波師またはアウフギーサーと呼ぶこともある。あおがれた客は猛烈な熱を感じる。 
アウフグースの発祥はドイツ。語源もドイツ語Aufguss。ドイツのサウナ―はアウフグースを目的にサウナに来る人が多いので、そういう人たちはアウフグースの時間に合わせてサウナを訪れる。80度以上のロウリュのあるサウナで行われるのが一般的。アウフグースはドイツのどこのサウナ施設でも数十分ごとに行われる。

本場ドイツでのアウフグース
1.アウフグースが始まる前に、熱波師がサウナのドアを開けて、タオルを回して空気を入れ替える。
2.アウフグースが始まるベルがなると、ドアが閉められ、アウフグース中につき立ち入り禁止という貼り紙がされ、途中で入ることができない。人気のある熱波師の場合は、ベルが鳴る前に満室になっていてぎりぎりに行くと入れないこともある。
3.まず最初一分ほど熱波師が自己紹介を行う。名前、使用するアロマの紹介、注意事項など。
4.自己紹介が終わると、ハーブやアロマ入りの水を、サウナストーンまたはサウナストーンの上に置いたクラッシュアイスにかけて蒸気を発生させる。アロマは既製品を使う熱波師もいるが、オリジナルブレンドを作る人もいる。早朝のアウフグースの場合、コーヒーの香りのアロマを使う熱波師も少なくない。
5.発生した熱波を、ひとりごとではなく、数人ごとにあおいで送る。あおぐのに使うのはタオルだけでなく、巨大な扇(おうぎ)や旗や鐘を使う熱波師もいる。熱波のあおぎ方、アロマの選択、時間など、熱波師によって大きく異なる。音楽をかけて踊りながらタオルや扇を舞わせて熱波を送る熱波師もいる。テーマ、人数や気候や天気に合わせた蒸気のあおぎ方、アロマと水のバランスなど、どれだけお客を満足させるサービスができるのか、熱波師の腕が問われる。
6.最後に拍手で終わる。終わると全員が水シャワーや水風呂に殺到する。日本のようにサービスの最中に追加のあおぎ(おかわり、といわれる)はないが、サービスが終わった後にサウナに残っていると、熱波師が更にあおいでくれることがある。

またドイツにはセレモニーと呼ばれる、アウフグースにプラスアルファしたサービスを行うサウナ施設もある。そうした施設では、熱波師が熱波をお客に仰ぐだけでなく、香り付きの冷却タオルやクリームを、その効能をしゃべりながら配ったりしてくれる。低温サウナで、アウフグースよりも長時間行われる。セレモニーでは熱波をあおがないこともあり、アウフグースよりもゆったりとしたサービス。

ドイツにはアウフグース大会があって盛大に行われる。熱波師が技を競うというだけでなく、パフォーマンス的な要素もあり、お客参加型のライブスタイルもあれば、熱波師が衣装をまとって演じる舞台演劇のようなスタイルなど様々。
ちなみにアウフグースは北欧にはほとんどない。ドイツ在住の北欧の人に言わせると、ドイツのサウナは決められたことが多くてきゅうくつだという。大きなタオルで足先まで完全にカバーしなくてはならない、サンダルが絶対に必須など、とにかく自由な北欧のサウナと比べて、ドイツサウナには決まりごとがあるのが嫌だという。アウフグースも北欧の人はあまり好まない傾向にある。アウフグースはいってみればエンターテイメントであり、子どもの頃から好きなようにサウナを親しんできた北欧の人には邪魔なのかもしれない。これを日本人に当てはめると、温泉に余計なエンターテイメントを持ち込むようなものかもしれない。日本人は子どもの頃からお風呂に親しんでいるから、温泉に余計なパフォーマンスを持ち込まれても邪魔にしか感じないだろう。
しかしながらサウナの歴史の短い日本にはアウフグースが入り込む隙間は十分にあり、国内にはアウフグースを提供してくれるサウナ施設がいくつかある。そこではドイツのように熱波師が音楽に合わせて踊りながらタオルを回したり、あるいはパフォーマンスなしでただタオルで客に熱波を送ったり、色々な種類があり、一部のサウナ―から支持を集めている。